村田製作所、AMD を活用して部品設計シミュレーションを加速
村田製作所は、AMD EPYC™ CPU を導入することにより、電力消費量を改善しながら、データセンターのフットプリントはそのままでシミュレーション性能を 3 倍に向上させました。
コンピューター コンポーネントの設計には、生産を最適化するために大規模なシミュレーションが必要であり、それにはデータセンターの優れたパフォーマンスが求められます。株式会社村田製作所は、年間 100 億ドル以上の収益と 80 年にわたる歴史を持つ、この市場をリードする企業の 1 つです。AMD EPYC™ プロセッサにより、コストとデータセンターのフットプリントを抑えながら、シミュレーション性能を向上させています。
「村田製作所は世界中にコンポーネントを供給しています」と、村田製作所のプリンシパル エンジニアである米倉 博氏は語ります。「当社は高周波デバイスに力を入れています。これらのデバイスを開発、製造、設計し、コンピューター リソースを使用してシミュレーションします。当社の無線フィルターは、電気通信に必要な高周波を抽出し、次の段階のデバイスに送ります。その後、信号は増幅され、スマートフォンの基地局に送信されします。当社は、スマートフォン用のフィルター モジュールとパワー アンプを設計、製造しています」
このプロセスでは、コンピューター駆動のシミュレーションが鍵となります。「当社にとっての課題は計算です。計算なしでは何も作れません」と米倉氏は語ります。「このことは特に電波の場合に当てはまります。それは、信号が見えないためです。電磁場や熱の挙動を視覚化する必要があります。そのためにはシミュレーションが必要です。開発作業を高速化し、高性能デバイスを製造するために、非常に迅速かつ正確にシミュレーションを実行する必要があります。つまり、高性能なコンピューターが必要になるということです。ANSYS® HFSS™ と、関連会社のムラタソフトウェアが作成した Femtet という別のシミュレーション ツールを使用しています。シミュレーション ワークロードを使用して特定の製品のパフォーマンスを確認しています」
AMD EPYC CPU によるシミュレーション速度の向上
村田製作所は、シミュレーションに重点を置き、常にデータセンターのパフォーマンスをどうすれば向上できるかを模索しています。「AMD が第 3 世代 EPYC CPU をリリースしたとき、私たちは自社製のシミュレータを使ってベンチマーク テストを実施しました」と米倉氏は語ります。「結果は非常に良好でした。そこで EPYC に切り替えることにしました。第 3 世代 AMD EPYC CPU を採用した結果、これまで使用してきた競合他社の CPU に比べて、シミュレーション速度が 1.5 倍から 2 倍も速くなったため、非常に満足しています」
「Dell はこのベンチマークのためにテスト マシンを提供してくれました」と米倉氏は語ります。「高密度なソリューションが必要でしたが、Dell には、最適な構成と周辺機器の選定をサポートしてもらいました。新しいサーバー環境を導入することで、シミュレーションを使用して新しい特性を解析しようと考えました。電気通信の分野では、特定の範囲の周波数を分析する必要があります。以前は、そのモデルの計算は比較的大まかで、詳細な応答は期待できませんでした。分析の精度が上がれば、さらに詳細な情報を確認できます。そのためには、より負荷の高いシミュレーションを実行できるよう、周波数の範囲を非常に細かい単位に分割する必要があります」
AMD が第 5 世代 EPYC CPU を発表したとき、村田製作所はこの製品がもたらすであろう、さらに高いパフォーマンスに期待を寄せました。「Ansys HFSS とムラタソフトウェアの Femtet® を使用したベンチマークで、素晴らしい結果が得られました」と米倉氏は語ります。「第 5 世代と第 3 世代の AMD EPYC プロセッサを比較しました。HFSS では分析速度が 30%、Femtet では 20% 向上しました。さらに、AVX-512 の 256 ビットの帯域幅を 512 ビットに変更しました。変更はシンプルなものでしたが、さらに 30% のスピード向上が実現しました」
データセンターのスペースは同じままでコア数を増加
村田製作所にはワークロードを高速化するために GPU を選択するという選択肢もありましたが、同社は AMD EPYC CPU の方がニーズに合っていると判断した。「GPU を採用することに決めれば、納期が非常に長くなることがわかっていました」と米倉氏は語ります。「また、GPU のメモリ サイズでは、大規模な処理の計算が将来的に求められたときに、それに対応できません。そのため、代わりにコア密度の高い AMD の CPU を使用することにしました」
AMD EPYC プロセッサへの移行と第 3 世代から第 5 世代の CPU への移行はスムーズでした。「完全な互換性があったため、社内のソフトウェア ワークロードは EPYC に容易に移行できました」と米倉氏は語ります。「AMD EPYC CPU 用に再コンパイルすることで、パフォーマンスを最適化しました。HFSS の最適化がうまくいくよう、AMD のエンジニアは Ansys にすぐに連絡し、HFSS が数学ライブラリを使用するためのシステム設定方法を教えてくれました。その結果、パフォーマンスが大幅に向上したのです。AVX-256 から AVX-512 への移行は簡単でした。BIOS 設定を変更しただけです」
「第 5 世代 AMD EPYC CPU を搭載したサーバーを導入し、12 チャネルの高速メモリ帯域幅を利用できるようになりました」と米倉氏は付け加えます。「これにより、1 台のサーバーで複数のシミュレーションを同時に実行する場合のパフォーマンスの低下を最小限に抑えることができます。クラウド サービスの利用時間を短縮し、大幅なコスト削減を実現できます。また、当社のサーバー ルームには余分なスペースがありませんでした。AMD EPYC CPU のコア密度が高いため、1 つのラックに複数のコアを収容できるようになり、サーバー ルームのフットプリントを大幅に節約できました」
3 倍になったデータセンターのパフォーマンス
パフォーマンスと省電力性は大きく改善されました。第 5 世代 AMD EPYC CPU を採用したところ、物理的なスペースはそのままの状態でデータセンターのパフォーマンスが 3 倍以上向上しました」と山田 辰哉氏は語ります。「以前は複数台のマシンで処理していたシミュレーションが、今は 1 台のサーバーで済むようになりました。そのため、電力効率が向上し、消費電力が減少しました。演算性能が 3 倍以上に向上し、消費電力が 2 倍に増えただけなので、今と同等の演算能力を得るための電力は 3 分の 2 に抑えられたことになります」
パフォーマンスの向上により、村田製作所の Ansys ライセンスの効率も向上しました。「Ansys はコアの使用数に基づいて課金されるため、使用しているコアの数を増やすと、その分、ライセンス料金は上昇します」と米倉氏は説明します。「しかし、コアをより高速に使用できるようになったため、計算に必要な時間を短縮し、全体的なライセンス コストを削減できました」
AMD が提供する一貫した製品ラインナップとロードマップにより、村田製作所はニーズに合った適切な CPU を選択できました。「AMD EPYC CPU の製品ラインナップはいたってシンプルです」と米倉氏は言います。「SKU を選択するのは非常に簡単で、製品リリースもちょうどいいタイミングでした。実装の計画もシンプルなものでした。村田製作所にとって AMD EPYC プロセッサの重要な特長は、低消費電力で多くのコアを備えているということです」
総合的に見て、AMD EPYC CPU は、村田製作所が求めていた要件をすべて満たしています。「現在、ワークロードの約 75% は、第 3 世代 AMD EPYC 7543 および第 5 世代 AMD EPYC 9655 CPU を含む AMD EPYC プロセッサで実行されています」と村田製作所のエンジニアである野辺 悠弥氏は述べています。「最新の導入環境では多数のサーバーが採用され、今後 2 〜 3 年はそれで運用できる見込みです。ただ、シミュレーションの計算量は常に増加していることがわかっているため、今後は AMD EPYC プロセッサを搭載したサーバーを追加する予定です。電力効率とパフォーマンスの高さから、企業は AMD EPYC CPU を検討するべきだと考えています」
お客様に関する情報
株式会社村田製作所は、先進的な電子部品、モジュール、およびデバイスの設計および製造におけるグローバル リーダーです。京都に本社を置き、セラミック製受動電子部品を専門としており、世界的に圧倒的な市場シェアを占めています。同社の製品は、通信、モビリティ、産業、ヘルスケア、および家庭用電気製品の市場で大きな存在となっています。村田製作所は研究開発に力を入れ、5G、IoT、オートモーティブ用電子機器などの分野でイノベーションを推進し、最新の電子機器の高性能化に大きく貢献しています。詳細については、murata.com をご覧ください。
ケース スタディに関する情報
- 業界:
電子モジュールおよびコンポーネントの設計および製造 - 課題:
高周波無線フィルター コンポーネントの設計のためにシミュレーションの精細度を改善する - 解決策:
データセンターのサーバーに第 3 世代 AMD EPYC™ 7543 CPU を搭載した Dell PowerEdge サーバーを導入し、その後に、第 5 世代 AMD EPYC 9655 CPU を導入する - 結果:
前世代の競合プラットフォームから第 3 世代 AMD EPYC CPU にアップグレードすると、パフォーマンスが 1.5 倍から 2 倍に向上。第 5 世代 AMD EPYC CPU ではパフォーマンスが 3 倍向上し、消費電力が 66% 減 - AMD テクノロジ概要:
第 3 世代 AMD EPYC 7543 CPU
第 5 世代 AMD EPYC 9655 CPU - テクノロジ パートナー: